インドにおけるJPO標章の侵害仮処分事件と商標登録異議申立事件が最終決着
(日本国特許庁の使用商標)

(被告の使用商標)

(被告の出願商標)

以前Authense IPのニュース「インドにおけるJPO標章の侵害仮処分事件(2024年1月発行)などで、インドで、日本国特許庁のJPO商標が冒認使用され、それに対して、日本国特許庁が侵害停止の仮処分を求め、同時に、相手方のJPO商標については、異議申立を求めている件についてご報告しておりました。
2024年1月段階では、インド デリー高等裁判所が、2023年10月11日付けで、最初のヒアリングの時に仮の差止めを認め、被告は、どのような商品・サービスについても、JPO Platinumロゴ及びJPOのロゴや標章を使用をしないように即時に効力を発する命令を出した旨を報告しておりましたが、本訴自体は進行中であり、商標登録異議申立についても結論は出ていませんでした。
その後、両当事者はデリー高等裁判所の調停・和解センターで和解交渉を行い、両当事者は、和解契約を提携し、紛争解決に至りました。
和解契約では、被告は今後一切、いかなる商品・役務の分野においても、本件商標または日本国特許庁のロゴ/商標と欺瞞的に類似するその他の商標を使用しないこと、出願商標は放棄することを約束し、また、原告すなわち特許庁は、損害賠償請求、訴訟費用の請求を放棄することに同意しました。
よって、今回の本訴は、和解契約に基づき、原告勝訴、被告敗訴で、裁判上の和解(判示の命令)をもって終了しました。
コメント:
インドの裁判所が、日本国特許庁への配慮した仮処分命令があり、その仮処分に従った形で、紛争解決に至っています。特許庁は日本の商標使用者の先生として、本訴の判決を得に行くかと思っていたのですが、民間企業と同じように和解で無駄な出費を抑えることにしたのかもしれません。
模倣品や冒認商標といった商標権侵害事件では、相手方に十分な資力がないことも多く、また、権利者側も、何も、損害賠償金が欲しい訳ではなく、使用を止めて欲しい、商標出願を取下げてだけですので、使用中止と出願放棄があれば、十分、合格点の解決だということではあります。
インドにおいて、特許庁は「JPO」の商標権もなく、そもそも業務の分野が違いますので、商標権侵害も突き詰めると難しいのかもしれません。
今回は、はやりJPOロゴについての著作権が効いているように思います。やはり、海外で事業をするには、図形要素やロゴが重要あることは間違いありません。
ブランドマネジメントではロゴを重視します。外国商標実務ではどうしても、権利網の歯抜けも出てきますので、そんなとき、ロゴがあると著作権で対応ができるかもしれません。
中国でも、どうしても商標権が取れないときに、ロゴを著作権登録をして、模倣品対策をすることがありますが、インドの本件を見ていると、海外では、ロゴの使用やロゴの著作権登録が、非常に重要だと改めて感じました。
情報提供元: Remfry & Sagar
2024年7月25日
弁理士 西野 吉徳