サンリオ「クロミ」の著作権侵害事案について
今回は著作権紛争の事例を取り上げました。キャラクターを活用したビジネスを展開するうえで、著作権は非常に重要な権利の一つです。
著作権の扱いを誤ると、後々トラブルの原因になりかねないため、十分に注意を払って対応することが求められます。
事案の概要
「クロミ」とは、株式会社サンリオが展開しているとても人気があるキャラクターで、現在、同社は同キャラクターについて商標出願もしております。
(商願2024-126158より)

今般、当該クロミについて、著作者人格権に関する訴訟が提起されています。
具体的には、株式会社スタジオコメット(本社:東京都練馬区、代表取締役:茂垣弘道 )が、サンリオを相手取り、クロミの著作者人格権に関する訴訟を提起しました。
2月25日配信のデイリー新潮の記事によりますと、スタジオコメット側の話として、スタジオコメットに所属するアニメーターがクロミを生み出した、と主張しているとされています。
そこで、著作権に関してどういった点が問題となっているのかを、分かりやすく解説したいと思います。
著作権とは
著作権とは、著作物を創作した者に発生する権利であって、”他人が「無断で○○すること」を止めることができる権利”です。
また、著作権は大きく分けると「著作者人格権」と「著作権(財産権)」に分かれており、「著作者人格権」は著作者の精神的利益を守る権利、「著作権(財産権)」は著作者の財産的利益を守る権利と整理できます。
このうち著作権(財産権)には、複製する権利、上演する権利、演奏する権利など、利用形態ごとに権利が規定されています。
また、著作者人格権には、ざっと、以下の様な権利があります。
a.公表権
まだ公表されていない自分の著作物について、それを「公表するかしないかを決定できる権利」(無断で公表されない権利)です。
b.氏名表示権
自分の著作物を公表する時に、「著作者名を表示するかしないか」、表示するとすれば「実名(本名)」か「変名(ペンネーム等)」かなどを決定できる権利です。
c.同一性保持権
自分の著作物の内容や題号を、自分の意に反して無断で「改変(変更・切除等)」されない権利です。
すなわち、著作権者であれば、勝手に自分の著作物を複製すること等を止めることができる(財産権)のほか、著作物が公表されるに当たって、著作者名を表示するかしないか、また、表示する場合にはどういった表示とするか(著作者人格権中の氏名表示権)を決定できることとなります。
主な論点
デイリー新潮の記事によりますと、スタジオコメットは、ざっと、以下の様な主張をしているようです。
① クロミはスタジオコメットに所属するアニメーターがデザインしたキャラクターであること
② また、当該著作は職務上作成された著作物であって、このため、スタジオコメットの著作物であること
③ 上記にも関わらず、クロミのグッズに“著作・発売元 株式会社サンリオ”などと表記されてしまっていること
個別の論点に係る整理
a.著作権の発生について(上記の①について)
著作者とは、「著作物を創作する者」のことです。そして、著作物を創作すれば、その時点でその創作者に対して著作権が自動的に与えられます。
この点、スタジオコメットのアニメーターがキャラクターを創作したようであれば、基本的には、そのアニメーターが著作者となることとなります。
b.職務上の著作物について(上記の②について)
著作者になり得るのは、上記a.のように、通常、実際の創作活動を行う個人(自然人)ですが、創作活動を行う個人以外が著作者となる場合が法律により定められています。
具体的には、次に掲げる要件をすべて満たす場合に限り、、個人(自然人)ではなく、会社などが著作者になります。
職務著作の要件
a.その著作物をつくる「企画」を立てるのが法人、その他の「使用者」(例えば、国や会社など。以下「法人等」という)であること
b.法人等の「業務に従事する者」が創作すること
c.「職務上」の行為として創作されること
d.「公表」する場合に「法人等の著作名義」で公表されるものであること
e.「契約や就業規則」に「職員を著作者とする」という定めがないこと
すなわち、上記の①及び②の主張に関しては、もし、クロミをデザインしたのがスタジオコメットの従業員であって、また、状況的に職務著作の要件を満たすようであれば、スタジオコメットがクロミに関する著作者となることとなります。
サンリオ側のコメント
本件に関しましては、サンリオは以下のコメントを発表しております。
当社は、当社のキャラクターである「クロミ」に関連して、株式会社スタジオコメット(本社:東京都練馬区、代表取締役:茂垣弘道 以下「スタジオコメット」といいます。)から著作権等の侵害に関して訴訟を提起され、現在も訴訟係属中です。
当社としては、「クロミ」の著作権は関連する契約等によって明確に当社に帰属しており、また、著作者人格権についても適切に処理されていると考えております。その上で、当社は、昨今のスタジオコメットの主張について、誠意をもって協議して参りました。しかし、当社の見解がスタジオコメットに受け入れられることはありませんでした。
当社としては、長年に渡りキャラクター等の知的財産権の取り扱いについて、適切に対応して参りました。今後も司法の場で当社の立場を明確に伝えて参ります。
今後の想定される争点など
著作権(財産権)は譲渡等が認められておりますから、「著作権は関連する契約等によって明確に当社に帰属しており」といったコメントからは、著作権(財産権)の譲渡に関して何らかの契約が取り交わされている可能性が高いと考えられますが、実際にどうであったか、といった点が争点となる可能性があります。
また、一方で、著作者人格権(氏名表示権など)は一身専属的な権利であって、譲渡等は出来ないこととされています。ただし、著作者人格権であっても不行使特約(権利行使しない約束)は出来ることとされており、この点、そういった約束が2社間であったかどうか、といった点も争点となる可能性があります。
こういった争いを避けるためには、
- 著作権(財産権)の帰属に関する契約等は事業の展開前に必ず明確にしておくこと、
- 著作者人格権については必要に応じて不行使特約(権利行使しない約束)を明確にしておくこと、が重要となります。
2025月3月12日
弁理士 浜崎 晃