発売60年目、あのお菓子が立体商標としてついに登録!
皆様もよくご存じの、江崎グリコ株式会社のチョコレート菓子「Pocky」の商品形状について、立体商標の登録が認められました。
これは、「Pocky」の文字のないその“かたち”だけで、多くの消費者が「Pocky」だと認識できるとの判断からの登録になったのでしょう。
今回は、「Pocky」の立体商標の登録について解説します。
立体商標とは?
「立体商標」とは、文字やロゴではなく、商品の形を商標登録する仕組みのことです。ただし、商品の形は、ありふれた形状になりやすい場合が多く、形状のみでは識別力がないと判断され、登録ハードルは非常に高いといわれています。
実際、本件の出願は、「近似した構成からなるチョコレートを使用した菓子が一般に取引されている」として、一度、拒絶されています。
ポッキーが立体商標を取得した“すごさ”とは
それでは、今回、なぜ「Pocky」は立体商標として登録することができたのでしょうか?
商標法には、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」については商標登録を受けることができる規定があります(商標法3条2項)。
すなわち、使用されてきた結果、多くの消費者に、この形状はポッキーだと認識されているのであれば、登録を認める制度です。
ポッキーが立体商標を取得した“すごさ”
商標法3条2項の適用を受けること自体も、かなりハードルの高いことなのですが、売り上げや、広告宣伝、アンケート結果などをもって丁寧に反論し、今回の登録となりました(江崎グリコ株式会社 ニュースセンター)。
反論の中でも特に興味深かったのは、「Pocky」は、2020年に世界売上No.1(世界売上高:推計589.9百万USドル)としてギネス世界記録に認定されているという事実や、一般消費者を対象に実施されたアンケート結果では、回答者の「91.6%」が、本商標(第6951539号)を目にしただけで「Pocky」をイメージしたとの結果が出ている点です(※1)。
反論で比較されている、立体商標「シン・ゴジラ」の著名性を示すアンケートでは、回答者の認知度が「64.4%」であり(※2)、おなじチョコレート菓子の「たけのこの里」では、「89%」(※3)ですから、「Pocky」の認知度の高さが伺えます。
発売から60年、これまで築かれてきたブランド力の証とも言える認知力で、立体商標を見事勝ち取りました。
“あ、ポッキーだ”
我が家の子供たちと「ポッキー」ブランドサイトを見ながら、「Pocky」と思うかどうか、話してみました。
たくさんの種類がありますが、我が家では、アーモンドクラッシュ入りのごつごつした形状も、つぶつぶいちごがはいった形状も、「「Pocky」だと思う!!」との意見になりました。
皆様はどうでしょうか?全部、「Pocky」だと感じますか?色々な意見をきいてみるのも楽しいかもしれません。
(※1)(※2)詳細なアンケート条件等は、Jpatpatにて商標登録第6951539号よりご確認ください。
(※3)詳細なアンケート条件等は、Jpatpatにて商標登録第6419263号よりご確認ください。
2025年8月22日 弁理士 淡路里美