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Article 知財インサイト

2026.01.07

「Twitter」商標に不使用取消審判請求 ― リブランディング後の旧ブランド管理リスク

ブランドネーミングの変更と商標登録取消に関して

TWITTER(ツイッター)商標に対する不使用取消審判について

2023年7月24日に、著名なsnsであるTwitterは、その名称を「X」へ変更しました。

これは、大規模なブランドのリブランディングであり、当時、我が国でも大変に話題になりました。

このリブランディングは、Twitter社を買収して新しく実質的な経営者に就任したイーロン・マスク氏の意向とされており、その後、Twitterは「X」と名称を変えて、全世界でサービス提供を続けています。

そしてこの度、米国において、X Corpが所有するtwitter関連の登録商標10件について商標の不使用取消審判が請求された、というニュースが報じられております。

<参照> https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/1d2aa5f7972b4797b9658bb1ee512339a19415f6

今後は、X Corp社が、過去3年以内にTwitter商標を使用していた、といったことを証明できるかが焦点となることとなります。証明できない場合には、商標登録は取り消されることとなるからです。

不使用取消審判とは

不使用取消審判とは、どういった制度なのでしょうか。

いわゆる不使用取消審判は、世界の多くの国において導入されている制度で、3年以上にわたり継続して商標が使用されていない場合に、その商標登録の取り消しを求めることができる制度です。

正式には「商標登録の取消しの審判」といい、継続して三年以上日本国内において商標権者等が指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる、といった制度となります。

これは、以下の様な趣旨で導入された制度です。

  • 商標法上の保護は、商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるのが本来的な姿であるから、一定期間、登録商標の使用をしない場合には保護すべき信用が発生しないか、あるいは発生した信用も消滅してその保護の対象がなくなると考えられること
  • そのような不使用の登録商標に対して排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し、かつ、その存在により権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めることとなること

すなわち、本来であれば使用をしているからこそ保護を受けられるのであり、使用をしなくなれば取り消されてもやむを得ない、といた考え方によっています。

そして、不使用取消審判が請求された場合には、審判請求前の3年以内に登録商標の使用をしていることを被請求人(商標権者)が証明しない限り、商標登録が取り消されることとなります。

リブランディングと不使用商標の取扱いについて

今回、X Corpが提供するサービスの名称を「Twitter」から「X」に変更したことにより、現在は使用していない「Twitter」関連の商標について、取り消されるかどうかが問題となっておりますが、これは、X Corp社のみではなく、様々な企業について問題となる可能性があるものです。

リブランディングの一環で商品やサービスの名称を変更する、といったことは珍しくないことかと思われますが、その場合、現在はもう使用していない過去の商標(ブランド名称)については、商標登録が取消となっても、一見、問題は無いようにも思われます。

ただ、今回のX Corpの事案の「Twitter」のように、そのサービス等名称が大変に著名な場合には注意が必要です。そのサービス等名称が著名な場合には、変更前の提供者の商品・サービスであると需要者が勘違いをしてしまう可能性が高いからです。

X Corpのケースでは、例えば、Twitterという商標登録が取り消されてしまって、誰でも使用できるようになってしまうと、理屈上は、X Corpと全く関係のない者が「Twitter」という言葉を使用してsnsサービス提供等が出来ることになってしまいます。

その場合、そういったリブランディングや商標登録に関する事情に詳しくない者からすると、「X CorpのTwitterが復活した」と勘違いをしてしまう可能性も、大いにあると考えられます。

なお、我が国には「不正競争防止法」という法律もあり、そちらの制度で、上記の様な”便乗的な使用”は防止できる可能性はあり、もし著名なブランドについてリブランディング等をした場合であって、上記の様な ”他者の便乗的な商標使用” を防止したいようであれば、そちらの制度等を使って対応を検討していくことが、想定されます。

著名商標の商標登録に関して

では、リブランディングにより過去に使用していた著名な商標に係る商標登録が取り消されたとして、その過去に使用していた商標について、自社はもう使用できなくなるのでしょうか?

我が国では、その言葉自体が商標登録されていなくとも、他人の業務に係る商品・サービスを表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合には、商標登録はできないとする取扱いがあります。

この点、仮に、リブランディング前に使用していた商標に係る商標登録が取り消されたとしても、それが需要者の間で周知なものであれば、他者がその同じ商標について商標出願をしたとしても、商標登録はできない結果となる可能性が高いです。

すなわち、その使用しなくなった商標の周知性が残っている間は、他者は商標登録できない可能性が高いと考えられます。

まとめ

以上、リブランディングによる使用ブランド(商標)の変更と、その場合の、旧ブランド名の取扱いについて簡単に解説しました。

リブランディングによって使用しなくなったブランド名については、使用しないのであるから、一見、取扱い等について注意する必要はないようにも思われますが、そのブランド名が著名であったような場合には、その後の他者の無断使用によって需要者がサービス等の出所を混同してしまい、結果として、自社の評判を低下させる、といったリスクも想定されます。

ただ、商標法上は、「不使用の登録商標に対して排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害する」といった考え方があり、使用していない商標登録については取り消されてしまう可能性があります。

その場合には、不正競争防止法などの制度を利用して、そういった、自社のサービスと混同を生じさせるような他者の商標(旧名称)の使用を防止していく、といった対応の検討が必要となります。

2025年12月26日 弁理士 浜崎晃