ラーメン「AFURI」と日本酒メーカー「雨降」の無効審判の行方は?
昨年の9月にアップしたこちらの記事に登場した、商標「AFURI」と商標「雨降」についてその後、動きがありました。
以下、AFURI 株式会社を「AFURI」、吉川醸造 株式会社を「雨降」としてご説明します。
まず、「AFURI」側が「雨降」(登録6409633)に対して起こしていた無効審判は「成り立たたない」との審決となり、その後、審決取消訴訟を起こしましたが、先月の5月16日に判決が出ており、請求棄却となっています。
また、「雨降」側は、以下の商標を出願していますが、「AFURI」の商標5件を引用して拒絶されており、その後「AFURI」(第6245408号)に無効審判を起こしています。こちらの無効審判は現在も審理中であり、これにより、以下の商標は審査保留中です。

特許庁の通常の審査基準で考えれば、上記商標が「AFURI」に類似するとの判断はとても妥当な判断であり、拒絶されて登録できないだろうと考えられます。よって、「AFURI」(第6245408号)の無効審判がどうなるのか、行方が気になるところです。
なお、上記は「AFURI」と「雨降」で起きている商標権侵害訴訟とはまた別で動いている争いで、特許庁へ申請された商標の登録の是非に関するお話です。商標権侵害は、「AFURI」の商標権に類似する商標を「雨降」側が使用したのかどうかといった観点での争いとなるものと思いますが、上記は、両者が特許庁へ申請した商標に関する争いです。
ところで、我々がお客様から多くいただく質問の一つとして、どの商標を登録したらよいですか?というものがあります。
お客様がどのような文字商標やロゴを使用するのか等により、一概にこれがよいと言えるものではありませんが、一つ言えるのは、実際に使用している態様を必ず取ってほしいということです。
また、実際に使う商標とその商標から普通に生じる読み方が異なる場合は、それぞれの商標の取得を考えてほしいと思います。
今回の商標「雨降」はまさにその例で、使っている商標は「雨降」だが、読ませたい音は「アフリ」だったのでしょう。このような場合は、少なくともカタカナで「アフリ」と取っておくと安心です。
また、当初はそのような読み方をしていなくとも、使用していくにつれ商標の使用態様が少し変化したり、消費者によって読みやすい略称などが発生するということもあります。
このようなことに備え、商標の見直しを毎年行うか、数年に一度でも登録商標と実際に使っている商標が違っていないかをチェックする、違う態様での使用が多くならないよう会社で商標の使用に関するガイドラインを作る、使用により変化してしまった商標でブランド力を高めたいのであれば、違いの程度によっては新しく商標を取得するべきか検討する、といった活動をしていくことも考えられます。
今回の争いは、商標登録したから安心ではなく、そこからが始まりと考えて実際の使用についても日々チェックしていくことが大切だと考えさせられる事件でした。
2024年6月24日
弁理士 淡路 里美